眼科疾患に対して行うレーザー治療では、疾患や状態によりさまざまな手法の治療が行われています。
レーザーによる網膜光凝固術
網膜へのレーザー照射による治療では、合併症として網膜浮腫を起こす可能性があります。それをできるだけ防ぐため、1~2週間毎に治療を行っていきます。
事前に瞳孔を大きく広げる点眼薬(散瞳薬)を用いて安全に照射できる状態にする必要があります。この点眼の効果は個人差がありますが4~5時間持続し、その間は近くが見えにくい・いつもよりまぶしく感じるといった状態が続きます。ご帰宅の際にお車などの運転ができませんので、あらかじめご了承下さい。
網膜裂孔、網膜格子状変性など
網膜に裂孔などの穴ができ、網膜が剥がれる危険性がある際に行われます。裂孔の周囲をレーザーで焼き固め、網膜をしっかりくっつけて網膜剥離への進行を止めます。ほとんどの場合、網膜周辺へのレーザー照射ですので、これによって視力が落ちることはありません。この治療は、痛みをともなう可能性もあります。なお、緊急性が高い場合には、受診されたその日に行われることもあります。
糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症など
血流が途絶えた部分の網膜をレーザー照射によって凝固させ、もろい新生血管の増殖を予防します。この治療で視力の回復はできませんが、「見る」機能で最も重要な役割を果たしている黄斑部分への血流を保ち、深刻な視力低下を予防します。この治療は、痛みをともなう可能性もあります。なお、網膜浮腫を起こして視力低下がある場合には、浮腫の周辺にレーザー照射を行います。
レーザー治療による虹彩光凝固術
緑内障
点眼薬を試しても眼圧が十分に下がらない、あるいは眼圧は下がるが視野障害などの進行が止まらない場合などに有効な治療法です。隅角光凝固術は、隅角にある繊維柱帯にレーザーを照射し、目詰まりを改善させて房水の流れを正常に戻します。治療後、一時的に眼圧が上昇することもありますので、ご帰宅は眼圧を測定して正常範囲であることを確認してからになります。
なお、この隅角光凝固術のレーザー治療は痛みがなく、5分程度で終わります。
閉塞隅角緑内障で発作を起こす可能性がある場合
虹彩(瞳の中心を囲む茶色い部分)にレーザーで小さな穴を開けて房水が流れるようにします。これにより眼圧の急激な上昇による緑内障発作が起こる可能性がなくなります。術後時間の経過とともに、虹彩に開けた穴が閉塞してしまうケースもありますが、その場合は再びレーザーで穴を開けます。
緊急性が高い場合は当日に行いますが、そうでない場合には予約をしていただきます。事前検査後に瞳孔を縮める縮瞳薬を点眼してレーサー治療を行い、術後検査と処置を行います。事前検査から術後の処置までは約2時間が目安になります。
このレーザー治療を受けた後は、半日程度目がかすみますので、ご帰宅痔にお車の運転をすることはできません。あらかじめご了承下さい。また、術後は通院による診療が必要です。
YAGレーザー後嚢切開術
後発白内障
後発白内障は、白内障手術で眼内人工レンズを挿入する際に残した水晶体嚢の後嚢の部分が濁ってきて生じるものです。YAGレーザーを照射して後嚢の濁りを簡単に除去できます。治療は2~3分程度で終了し、痛みもまったくありません。なお、後発白内障の場合、再発はほとんど起こりません。
事前検査を行って散瞳薬を点眼して瞳孔を広げ、レーザーを照射します。この点眼の効果は個人差がありますが4~5時間持続します。その間は近くが見えにくい・いつもよりまぶしく感じるといった状態が続き、ご帰宅の際にお車などの運転ができませんので、あらかじめご了承下さい。それ以外に当日の生活や運動などに関する制限はありません。
この治療後には、一時的に視界が濁り、もやのように見える場合がありますが、これは弾け飛んだ水晶体嚢の後嚢のかけらが眼内に浮遊していることにより起こっています。時間経過とともにこうしたかけらは沈んでいって気にならなくなります。
合併症としては、眼圧の一時的な上昇を起こす可能性があります。また、ごくまれですが、網膜剥離を起こすケースもあるため、治療後の診療が不可欠です。特に1ヶ月後の視力・眼圧・術眼の散瞳検査は重要です。